05年の11月くらいに日記に載せたお話です。
忍跡で娼館パラレルです。







単調で変化も刺激も無い生活が、一気に変わったあの日、あの出会い。
もともと真面目に生きてきたわけではなかったけれど、更に一歩や二歩道を踏み外してみれば、そこには、生きることが何倍も難しく――― そして楽しい世界が広がっていた。

愛とか恋とか、狂おしい熱情に胸を焦がす相手を指先で遊ばせて、一向に熱くならない心に諦めを抱いていたこれまでのオレが信じられないくらいだ。
常に求められる立場にあったオレが、欲しいと、必死に手を伸ばして、たった一人に愛を乞う。
目で見て、心で想って、そして彼の一挙手一投足に意味を見出し、僅かに投げ掛けられるメッセージに行動を返す。そうしなければならなかった。

面倒臭い、
そう思わなくも無い。けれど、何時しかそれも楽しいと感じるようになる。
何でも思い通りになってきたから、多少手の掛るモノが珍しく、新鮮に映ったのかも知れない。
・・・いや、どうだろうか。
でももう、そんな事は問題にはならないのだけれど。
もう、自分を冷静に客観視出来ないくらいに、墜とされてしまったのだから。


只の好奇心は、時に重大な選択ミスとも云える事態を引き起こし、そして軽い一歩が引き返す事の出来ない泥沼 ――天国かもしれない―― に身を投じさせる。
甘やかに胸に芽生えた想いはいつしか、自由を縛る強固な鎖と変化する。

じわじわと内に育ってゆく感情から逃れたいとは思わず、また同様に、自分に興味を示し始めた彼を逃して堪るかと思った。




狂おしく燃える想いに、現実を忘れさせる幻想を具現化したような空間。バロック調の豪奢な調度品が、薄赤い照明に照らされている。その中央に設けられたソファに凭れる様にして在るのは、何にもかえて愛しい存在。
客を出迎える事もせず、いつもソファで単調な動作を繰り返している“彼”を見つめながら、小さいグラスに浅く注いだ液体をぐっと呷った。

「男らしいじゃねぇの」

笑みを含んだ声が掛けられる。
お前も飲むかとグラスを向けて見せれば、これで充分だと、彼は手に持った細いパイプを掲げて見せた。そしてまた一口、美味そうに口に含む。

「どうした?」

困った顔をしているだろうオレに、彼は訝しげに聞く。
その声に立ち上がってソファの前に跪き、パイプを噛んで赤くなった唇に、優しく触れるだけのキスをする。そしてオレは、吸い込んだ吐息に紛れる脳を痺れさせる味に、目を細めた。

「・・・酔いそうやなぁ」

そう正直に感想を漏らすと、酒より効くだろう、とパイプを向けてくる。それを断り、差し伸べた手を逆に包み返す。

「身体に悪いんやけどな・・・」

「でも、止めろって言わねぇよな、お前」

 身体でも壊して、この仕事辞めて欲しいとか思ってるのか?

意地悪く覗き込む彼には、口付けて返してやる。本当に、意地が悪いヤツだ。知っていてそんな事を聞いてくる。
狂って欲しくも無いが、元気に他の男に抱かれて欲しくも無いのだ。

「阿片は身体に毒なんやけど・・・」

部屋に充満する煙が、酩酊しているような感覚を起こさせる。靄のかかった視界に、それでも彼の蒼い双眸は鮮やかだ。

「煙に包まれた景吾の貌があんまり綺麗やから・・・」

 だから、止めろって、言われへんのや

「・・・・・・忍足」

告白すると、彼はよく見せる真意の掴めない曖昧な笑みを見せて、またパイプを一飲みした。
形のよい口から吐き出される煙が、じんわりと宙に溶けてゆく。
そして、恍惚の表情。

堪らず引き倒したその後は、いつも酔っているから――― あまり、記憶に残らない。







阿片は体に毒です。

当時見たDVDをパロったものだったはずです。
確か、宮沢○えが出ていた中国風の・・(うろ覚え)

060508



<<