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言葉の裏・真の意味
「好きや」 というたった一言を、”タラシ・遊び人・種馬”と(不本意ながら)三本柱で提唱されるオレ・忍足侑士は、かれこれ1年半も言い出せずにいた。 けれどこの日―― 夏の気配を空気に滲ませる、6月の半ば。 思い余って、とうとう口に出してしまった。 雨上がりの、陽の光が葉上の水滴に反射して、世界が光に満ち溢れる美しい日。 自分の未来も、このように光溢れるものに違いない――― と、確信(よく根拠の無い自信だと言われるが)した上での告白だった。 一つ、言っておくが。 オレはモテる。 ちなみに強豪と名高いこの氷帝学園男子テニス部の、その200人にも及ぶ部員のトップ集団である正レギュラーの地位にいるので知名度もある。 友達も多いし、相談事もよく持ち掛けられているから信頼も厚いのだろう。ルックスだって悪くない。 先に言ったように、スポーツをやっているからそれなりに毎日体は鍛えているわけで。体力は十分、筋トレだって(そこそこ)しているから手荷物の一つや二つ軽いものだ。それはもう、お望みとあらばお姫さま抱っこで家まで送迎して差し上げましょう、というくらいに。 ・・・話は逸れたが。 そう、彼氏にするなら、オレは非常にお得な男だと思うのだ。 そんなオレが。 「好きや」 と、意を決して告白したら。 これ以上は無いというくらいに、イヤそ〜うな顔をされた。 秀麗な顔を―― 勿体無いから止めろと、こちらが止めたくなるくらいに歪めたオレの想い人・跡部景吾は、無言でオレの言葉を受け止めた。 汗ばむくらいの陽気であるこの日に、オレ達の周りだけ気温が下がった。間違いなく。 終わった、と思った。 強い光が自分の影をますます濃い闇色に染め上げて・・・そしてその暗黒に、足元からずぶずぶと嵌っていく感じがした。 ・・・大げさな表現だろうか? けれど1年半―― いや、その存在を意識し始めたときから考えれば有に2年近くも想い続けてきた相手であるのだ。その相手に振られたとあらば、落ち込まない奴の神経こそを疑う。 本当に、本気だったのだ。 見上げれば。 夏手前の濃くなり始めた空の蒼と、大きく固まりだした白雲が目に痛いばかり。 「・・・・・・・・・」 ――― ああ、でも。晴れた日でよかったかも知れない。 今の天気が曇りや雨だったら、相乗効果でますます落ち込むといったところだろう。けれどまぁ、いくら天気がよくても落ち込むことには落ち込むわけで。 明日から、あんましゃべってくれんようになるんかなーと思うと、なんだか淋しさが倍増する。 「・・・なぁ、なんでオレじゃあかんかったんか・・それだけ教えてくれへん?」 「ぁあ?」 往生際が悪いと思いつつも、理由を聞かなければ諦めがつかなかった。 だって来る者拒まず去る者追わず、盛んなときは一週間おきに相手を変えていたこのオレが初めて自分から好きになった相手なのだ、跡部は。 しかし、不機嫌に返されてちょっと怯む。 「いや・・言いたないんなら、ええけど・・・」 振られたことで跡部との距離が遠のいたとしても、しつこくしてこれ以上嫌われるのは嫌だった。 (・・・なんや、オレ、アホちゃうか?) このシチュエーションには、物凄く覚えがある。それはいずれも、今とは逆の立場でだったが。 そのときの自分は、振った後もしつこく食い下がってくる女共を心底鬱陶しいと思い、嫌悪感に近い感情を抱いていたはずだ。 その彼女達と同じ立場に、まさか自分が立つことになろうとは。そんなことは夢にも思わなかった。 そして反省する。 (あん時は酷いこと思うて堪忍な・・・ アユミ ナツコ カオリ ハルカ ヨウコ クミコ サユリ シズエ ・・・・・・) オレは素気無く振ってきた過去を、呪文のように列挙した。 (だから頼んます!跡部に嫌われとうないっ!) 祈る対象がおかしい感じはするが、そんなことはどうでもいい。改心して何かに祈る事で、跡部がオレを嫌わないでくれるというなら。もう何にだって縋れる気分だ。 果たして。 その思いが通じたのかは定かではないが、 「・・・別に”あかん”とは言ってねぇぞ」 「えっ?!・・・・・・それじゃあ、」 「いいとも言ってねぇけどな」 がくりと肩を落とす。 しかし、首の皮一枚繋がったのは確かだ。 「なら・・なんでさっき嫌そうな顔したん?」 「別に、嫌そうな顔はしてねぇよ」 どこがや。 そう思ったが、心の中に留めておいた。 「ただ、どういう意味でとればいいのか迷っただけだ」 「・・・・・・は?」 「だから、」 はぁーと苛ついたようにため息をついた跡部は、物分りの悪い子に言い聞かせるように、少し身を屈めて、上目で覗き込むような仕種をした。状況を忘れて忍足はちょっとだけどきりとする。 「お前の言葉の意味を計りかねてた。オレだってお前のことは特別嫌いってわけじゃねぇけど、」 「友達の"好き"って意味やないで。ついでに言うとくと、からかってるわけでもあらへんし、ジローが言うとるような軽いカンジの好きともちゃう」 ちょっとムキになる。 跡部からの信用は無いに等しいとは思っていたが、この場面で疑われるのは流石にキツかった。 「・・・ふぅん。それじゃぁ”友達の好き”って、なんだ?」 「は?」 「一緒にいて楽しいとか、話が合うとか、信頼できるとか・・・そういうのがお前の言うところの”友達の好き”ってヤツか?」 「まぁ・・・そうやな」 「なら、”恋愛感情の好き”ってのは、そこにキスしたいとか触りたいとかセックスしたいとか?そういった肉欲が伴ったものか?」 「え・・・あ、まぁ・・・」 ヤりたいか否かと言われれば、それはヤりたいに決まっている。 しかし、こんなことを聞いてくるとは。 (もしかして・・跡部、恋愛したことないんか?) そんなことはないだろう、とは思うが。けれど、もし、そうなのだとしたら・・・(上手くいけば)オレが跡部の初めての相手となるのだろうか・・? 「・・・・・・」 なんだか、とてもドキドキしてきた。 しかし次の瞬間。 心地よい青春色たっぷりのドキドキが、跡部の一言によって一気に違うものとなる。 「じゃあ要するにお前は、オレとキスとかセックスとかをしたいと思っているわけか」 「―――――・・・」 くらりときた。 「・・・・・・跡部・・な、お前、ちょお・・・ 男でも”慎みを持て”って思うとき、よくあんで・・?」 連発される危うい単語にますます心臓を早めつつ、オレは眉間を指で抑えながらも取り敢えず思ったことを口にしてみた。 冷静なように聞こえるだろう返答に、跡部は何が面白くないのかいっそう眉を寄せた。「大きなお世話だ」と低く呟くように言って、 「で? どうなんだ?」 身を寄せて、じっと覗き込んできた。 (・・・・・・悪魔や・・っ!) この無防備な上目遣い、そんなことを聞くお前の神経こそどうなのだ、と聞き返したくなる。 オレは本気で、逃げ出したくなった。 この、自分にとって美味しくはあるが、いろんな意味での危機的状況から心底脱したいと思った。 そしてオレは逃げた。 ここで逃げるのは跡部のためだと。 このまま会話を続けたら絶対にただでは済まなくなるから、自分は跡部を大事にしたいから――― そんな理由を延々と考えて情けなさを誤魔化しながら、オレは走った。 後ろから跡部の怒鳴り声に近い呼ぶ声がしたが、それを振り切って、ただひらすらに走ったのだった。 |
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ラブコメってこんなカンジですか・・?(苦) 書きかけでずっと放置していたものを終わらせてみました。 なんか終わり方が中途半端です か・・ 050225 |